〜「語りべ」からのお知らせ〜
この記事は、バックスファンクラブのオフィシャルメールマガジン、
帰ってきた!「語りべ」通信・第25号 とのコラボ企画です。
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日本全国津々浦々のホッケーファンの皆さん、こんにちは。
今季限りでの現役引退を表明していた、日光バックスの
ショーン・ポディーン選手が、
昨日、アメリカへ帰国しました。
ポディーン選手にとって、現役生活最後の試合となったのは、
5日に行われた、全日本選手権の3位決定戦。
第3ピリオド残り1分半を切ったところで、シフトされたポディーン選手は、
ホイッスルが鳴ってゲームが止まり、他の選手が、チェンジをしていても、
ベンチに戻る素振りを全く見せずに、
試合終了を告げるホーンが鳴るまで、リンク上でプレー。
最後は、力なくフェンス際を転がっていたパックを、無言で拾い上げて、
現役生活にピリオドを打ちました。
アメリカのミネソタ州ロチェスターで生まれ、
5歳の時からスティックを握っていたという、ポディーン選手。
地元の大学を卒業後、AHLでのマイナー生活を経たのち、
エドモントン オイラーズでNHLデビュー。
その後、フィラディル フィアフライヤーズ、コロラド アバランチ、セントルイス ブルースと渡り歩いて、
11年間で通算699試合に出場し、100ゴール106アシストをマーク。
さらに、スウェーデンの2部リーグのチーム、ヴァクワ レイカーズでも2年間プレーした後、
今季から袖を通したバックスのジャージで迎えた38歳の誕生日が、
彼の長い現役選手生活最後の日となりました。
「プロ生活での一番の思い出は、もちろんスタンレーカップを獲得したことだ」
とポディーン選手自身が口にしたように、
今から5季前の2000−01シーズンには、コロラドの一員として、NHLで優勝。
その一方で、同じ年に、
「とても珍しい病気に侵されていた兄妹に出会った時、
自分のような幸運な人生をスタートさせられなかった子供たちに、
もっと何かしてあげるべきだと思った」ことを機に始めた、
恵まれない子供たちを助ける活動を、長年続けていることなどが評価され、
社会福祉や地域活動に最も貢献した選手に与えられる、
キング・クランシー・メモリアル賞を受賞。
スタンレーカップとともに、
キング・クランシー・トロフィーには、
栄光の証しとして、
「ショーン・ポディーン」の名前が、しっかりと刻まれています。
日本でプレーしたのは、わずか1年だけでしたが、
リンクの上だけに限らず、これまでの様々な経験で得た、ありとあらゆるアドバイスを、
周りに与えて続けていたポディーン選手。
試合後には、そんな彼との別れを惜しんで、涙を流していたチームメイトの姿が、
バックスのドレッシングルームで見られたのは、もちろんのこと、
他のチームの選手たちからも、握手や写真を求められたりしていたほどでした。
実は、何を隠そう「語りべ」にも、ポディーン選手からアドバイスをされて、
とても印象に残っているシーンがあります。
丁度、アジアリーグの開幕から1ヶ月が過ぎようとしていた頃、
バックスが中国遠征の最後の訪問地、北京に来ていた時のこと。
遠征費にも制約があるバックスの宿舎は、
当時の試合会場である首都体育館の、すぐ裏にある古めかしいホテル。
中に入ると照明も薄暗く、お世辞にも、いいホテルだとは言えないところ。
さらに、そこから夕食に向かったお店も、決してキレイだとは言い難い中華料理店。
こぢんまりとした、そのお店は、もっぱら地元の人だけしか足を運ばないため、
当然、英語のメニューがないどころか、お手洗いでさえ、
「店を出たら右に行ったところにある、近くの公園にあるよ」
と言われるほどの、まさに庶民的なお店でした。
チーム専用機やチャーター機で快適に移動して、豪華なホテルで、おいしいディナーに舌鼓。
というような選手生活を、長く送っていたはずのポディーン選手だけに、
「これで大丈夫なのかな?」と、思わず心配をしていたのですが、
当のポディーン選手は、
「うん、うまい!」と言いながら、ビールを片手に、次々と料理を平らげていました。
そんな姿を正面に見て、今一つ釈然としない気持ちだった「語りべ」は、
たまたま同席していた若林弘紀コーチが、席を外した時に、
ポディーン選手に、その気持ちを伝えると、
彼の口からは、こんな言葉が返ってきました。
「
人生は楽しまなければダメなんだ!」
その言葉がウソではない証拠に、リンクの外のポディーン選手からは、
試合中の真剣な眼差しとは違って、
「オレは人生を楽しんでいるんだぞ!」
と言わんばかりの笑顔が、シーズンを通して、いつも見られました。
そして、ポディーン選手の口からは、
続けて、さらにもう一つ、こんな言葉も飛び出してきました。
「
ファミリーを大切にしろ!」
外国人は家族を大切にする。
とよく耳にしていましたが、ポディーン選手は、まさにその代表格。
奥様のシェリーさんと、愛娘のアンナちゃんの来日前は、いつも国際電話を掛けていましたが、
その時の表情は、長年NHLで戦った氷上の戦士とは、とても思えないほど。
特に、アンナちゃんと話している時のポディーン選手は、
ただの親バカ(失礼!)としか表現できないほどでした(笑)
しかし、それからシーズンが進んで行く中で、ポディーン選手の言動を見続けていると、
彼の言葉の意味深さを痛感。
自分の家族だけではなく、チームや、チームメイト、
さらに、アジアのホッケーをサポートし続けていたことでも分かるように、
ポディーン選手が口にした、「ファミリー」という言葉には、実に多くのものが含まれているのでした。
ポディーン選手の引退は、残念な限りですが、
彼が残していった、数多くの “財産” は、
これからきっと、バックスや、アジアのホッケー界で生きてくるに違いありません。
まさに、「大将」という言葉がピッタリ当てはまるほどの存在感を見せていたポディーン選手に、
最後に、こんな言葉を送りたいと思います。
「Thank you Shjon !!」