日本全国津々浦々のホッケーファンの皆さん、こんにちは。
昨夜、サントリー東伏見アイスアリーナで行われた、
ハルラ−コクドの
プレーオフ ・セミファイナル第4戦は、5−1でコクドが勝利。
シリーズを3勝1敗として、クレインズの待つファイナルへとコマを進めました。
勝負が決まったのは、第2ピリオドも、残りわずかとなった頃。
2点を追うハルラは、ゴール前にいた#96
ソン・ドンファン選手がシュート。
レギュラーリーグ得点王のスティックから放たれたパックは、
コクドのゴールネットを、突き抜けていったようにも見えましたが…
ルール上では、例えシュートを打たれてしまったチームが、パックをキープしていたとしても、
ゴールの確認のために、ホイッスルを吹いて、試合を止めることは可能ですが、
ジョン・バーナード レフェリーは、そのまま試合を続行。
反撃弾が決まったと信じて、喜んでいたハルラの選手たちを尻目に、コクドはプレーを続け、
#3
山口和良選手から、#8
今洋祐選手へと渡ったパックは、ハルラのゴールの中へ。
当然、ハルラは激しく抗議。
しかし、レフェリー、ゴールジャッジともに、ノーゴールと判断したため、
コクドに3点目が加わりました。
その後、バーナード レフェリーが試合再開を促しましたが、
ハルラは抗議を続行。
それに対して、ゲーム遅延のペナルティが2回課せられましたが、
それでも、納得のいかないハルラは、
レフェリーや、スーパーバイザー(試合の最高責任者)に、
見解を求め続けたため、試合は長時間中断。
最後は、この試合のスーパーバイザーを務めた、
清野勝氏の判断で、
第2ピリオドを56秒残して、一旦、試合を中断し、製氷作業に。
一時は、試合放棄か !? という雰囲気さえあったハルラでしたが、
説得に応じ、製氷作業終了後に、再びリンクに登場。
第2ピリオド19分4秒から、試合が再開されましたが、
残念ながら、ハルラの選手たちには、もう反撃意欲が残っていませんでした。
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【「語りべ」’s EYE】 〜「最高のステージ」を!
韓国には、徴兵制度があります。
国に多大な功績を残したり、健康面での問題があるなどの特殊な場合を除いて、
一般成人男子には、約2年あまりの兵役義務が課せられているのだそうです。
ハルラの選手を見てみると、
軍隊にホッケーチームがあった時代に兵役を終えた、#31
キム・ソンベ選手や、
兵役を満了して、今季からチームに戻ってきた、#30
パク・ジュンス選手らがいる一方で、
まだ兵役を終えていない選手も数人残っていて、
ソン・ドンファン選手も、その中の一人。
数年前から、兵役義務の時期について、思い悩んでいたソン・ドンファン選手は、
ついに、今季を “区切りの年” にすることを決意。
それだけに、ホッケー人生をかけて臨んだ今季は、
その意気込みが数字にも表れて、
レギュラーリーグで31ゴールをマークし、得点王のタイトルを獲得。
そんなソン・ドンファン選手の活躍もあって、ハルラはプレーオフ進出を果たしました。
「プレーオフは勝つことが大事」と言って臨んだ、コクドとのセミファイナル。
ソン・ドンファン選手は、
先日の記事でもお伝えしたように、第2戦で決勝ゴール!
普段はシャイな性格の彼には珍しく、
ド派手なガッツポーズを見せたかと思えば、
翌日の第3戦では、
足を負傷して欠場した#24
パク・ソンミン選手に代わって、
ゲームキャプテンを務め、リーダーシップを発揮するなど、
このプレーオフへの強い思いが、ひしひしと伝わってきました。
そして、迎えた昨夜の第4戦。
1点差に詰め寄るゴールを決めた! と信じて疑わなかったソン・ドンファン選手は、
腕を高々と上げて、反撃開始をアピール。
しかし判定は、無常にも、「ノーゴール」
必死に抗議を続ける
オタカー・ヴェイヴォダ ヘッドコーチを見つめる、ソン・ドンファン選手の目は、
悔し涙で、真っ赤になっていました。
第3ピリオド終盤に、完封負けを阻止する意地のゴールを決めたものの、
試合後のソン・ドンファン選手は、険しい表情で、口を真一文字に結んだまま。
こうして、彼のホッケー人生をかけた “区切りの年” は、幕を下ろしました。
今月下旬には、チームを離れる予定のソン・ドンファン選手。
入隊せずに、役所などの補助業務を担当する、公益業務に就く可能性もあるそうですが、
それでも、これまでのような練習をすることが、できなくなってしまうため、
韓国のスポーツ界では、そのまま現役生活にピリオドを打ってしまう選手も、少なくないのだとか。
もし、ソン・ドンファン選手が、このままスティックを置くことになったとしたら、
これから先、彼が自らのホッケーキャリアを振り返った時、
昨夜の試合のことを、どのように思うのでしょうか…
いつの日か、「(バンクーバー カナックス時代の)パベル・プレに憧れてつけた」という背番号96が、
そして、フィアンセと一緒に、幸せそうに微笑んでいた彼の笑顔が、
また、リンクに戻ってくることを、待ち続けたいと思います。
「最高のディナーを楽しむためには、お客様の力も必要です」
これは、11年前にオンエアされ、人気脚本家の三谷幸喜氏のシナリオと、
個性派揃いの出演者で話題となったドラマ、「王様のレストラン」の中に出てきたセリフ。
日本とフランスの経済会議が決裂し、
晩餐会のため訪れたレストランで、
次々とサーブされる料理にも、全く手をつけずにいた両国の代表者たちに対して、
松本幸四郎氏が演じた、ギャルソンの千石武が言ったものです。
(このドラマを知らない皆さん、ゴメンナサイ)
実は、昨夜の試合後、「語りべ」は、ふと、このセリフを思い出しました。
つまり、両チームの選手たちに、
これぞプレーオフ! と、誰もが納得するような試合を演じてもらうためには、
試合を運営する立場にいる人たちは、もちろんのこと、
ファンの皆さんや、我々マスコミも含めた試合に携わる全ての人間が、
「最高のステージ」を、用意しなくてはならないということです。
ゴールか !? ノーゴールか !?
というジャッジに関しての声を、試合後、ずい分と耳にしましたが、
何よりもそれ以前に、
・両チームのスターターが登場して、緊張感も高まり、さぁフェイスオフ! という時になって、
リンクに長い亀裂が入っているとの選手からのアピールがあり、
試合開始が10分も遅れてしまったこと。
・第2ピリオド終盤の、問題となってしまった場面で、
ソン・ドンファン選手がシュートを放つよりも前に、
既に、ゴールネットが切れてしまっていて、バックがすり抜けていく可能性が発生していたこと。
・そんな状況であるにもかかわらず、バーナード レフェリーは、ゴールネットの補修をしないまま、
ハルラの選手をポジションにつかせて、試合を再開させようとしたこと。
・そして、長い中断の間、
スタンドのお客さんが、ほとんど放っておかれたままに、なってしまっていたこと。
これらのことは、昨夜、起こってしまった紛れもない事実。
それだけに、昨夜の試合が、
「最高のステージ」で行われたとは言い難いことが、とても残念です。
そして、第1戦から第3戦までの舞台となった、アニャン アイスアリーナが、
ハルラのスタッフの皆さんや、韓国のファンの人たちの手によって、
「最高のステージ」となっていただけに、
ホッケーを取材させてもらっている、日本人プレスの端くれとして、
とても恥ずかしい思いに駆られてなりません。
「レフェリー委員長などからも話を聞いて、
こういうことが起こらないように、ファイナルへ向けて準備したい」
試合後の記者会見でこう語った、スーパーバイザーの清野勝氏の言葉どおり、
18日に開幕するファイナルが、
アジアのチャンピオンを決めるのにふさわしい、
「最高のステージ」の中で行われることを、望みたいと思います。
試合を楽しみにしているファンの皆さんと、
その声援を背に戦う、両チームの選手たちのために−
そして、敗れ去った選手たちのために−
◆
every play scene photos by YONSU★本日の小ネタは…