日本全国津々浦々のホッケーファンの皆さん、こんにちは。
「語りべ」が目にした、韓国、中国、そして日本の、“春のホッケーシーン” を お届けしている、
「アジアの春」シリーズ!
韓国編 、
中国編 に続いて、先週
日本編 をお届けしましたが、今回は、その続編です。
長編ですので、気合を入れて(?)ご覧ください!
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「続日本編を期待しています」
というメールを、たくさんいただきながら(ありがとうございます!)
なかなか時間を作れずに、お久しぶりのシリーズとなってしまったので…(汗)、
まず前回の日本編を、おさらいすると──
▼ 強化プログラムなどの成果で、日本の選手はレベルアップしている。
↓
▼ しかし、他の国もレベルアップしているので、厳しい試合が多くなる。
↓
▼ 大事な試合で勝つためには、国際的な競争力のアップが不可欠。
↓
▼ とはいえ、地理的状況を考えると、強化のための海外遠征は大きな負担に。
↓
▼ それだけにアジアリーグの発展が、競争力アップのための最も近道となるはず。
という話を紹介しました。(前回の記事をご覧になっていない方は、
こちら をクリックしてください!)
そこで続日本編では、「アジアリーグの発展」について、
3つのキーワードをベースにして、考えてみたいと思います。
そのキーワードとは、“
拡大”、“
育成”、そして “
変化” です。
━━━【 拡大 】━━━
まず “拡大” に関して言えば、(ファンの皆さんも思っているでしょうが)何といっても、
「もっとチーム数が増えないか?」 との思いです。
というのも、最近「語りべ」は、この思いを痛感させられた出来事に遭遇しました。
「アジアリーグって、尻すぼみになっているの?」
先日、野球を中心に取材をされている あるマスコミの方から、こんな風に言われたのですが、
この方は、4年前の秋に、オリックスと近鉄両球団の合併に端を発した、
プロ野球界の再編騒動の際に、次代のモデルケースとして、
韓国や台湾などと手を組んで、国際リーグを創設することも視野に入れるべきだと考えて、
アジアリーグのことを、リサーチしたのだそうです。
当時のアジアリーグは、日本勢+ハルラの5チームでスタートした1年目から、
ロシア(ゴールデン アムール)と、中国(ハルビン、チチハル)のチームが加わって、
4ヶ国8チームに拡大したところ。
それだけに、ロシアのチームがいなくなり、7チームで繰り広げられている現状を話すと、
「尻すぼみなの?」という言葉が返ってきたのです。
ホッケーファンの皆さんであれば、
親会社の業績悪化の影響で、
ゴールデン アムールが解散してしまったことや、
中国の2チームが、レベルアップのために、
(事実上)合併した経緯を、ご存知でしょうが、
そのことを知らない一般の人たちにしてみれば、
「参加国とチーム数の減少=尻すぼみ」
と思ってしまうのは、当然だといえるでしょう。
それだけに、参加国とチーム数の増加は、アジアリーグにとっての必須課題。
どうせ食事をするのなら、メニューが豊富なお店のほうが、楽しみが増えるのと同じように、
いろいろなチームや、対戦カードを見られるようにすることは、
アジアリーグの注目度アップに、つながるはずです。
一部の競技に、報道が偏ってしまっている日本のスポーツマスコミと、
ファンの人たちに、新しい魅力を提供していくことが必要であるのに加えて、
様々なタイプのチームと実戦を行うことは、選手たちのレベルアップと、
日本代表が、世界で戦う時の財産になっていくのは、間違いありません。
そのためにも、アムールのように、比較的移動距離の少ないロシア極東地区のチームや、
北米のマイナーリーグのチーム。
さらには、ナショナルブレイクに編成される海外のナショナルチームなど、
たとえスポット参戦でも構わず、積極的に招き入れて、
アジアリーグの “メニュー” を、もっと増やしていくために、
前向きな検討をする必要が、あるのではないでしょうか?
━━━【 育成 】━━━
“育成” という観点から見ても、
チーム数を増やして、アジアリーグが “拡大” していくことが、必須課題になるはずです。
先月行われた「世界選手権ディビジョン1」の日本代表に、
梁取(やなどり)慎也選手(明治大学)や、芳賀陽介選手(東洋大学)が、選出されたように、
有力選手が名を連ねている大学の実力校や、
釧路厚生社、トヨタセンチュリーズ、サーパス香川といった社会人リーグのチーム。
それに加えて、大会に臨む前の ユニバシアード代表やU20代表を、
こちらも、スポット参戦させてみては、どうでしょうか?
アジアリーグに参戦中のトップチームにとっては、格下との試合になりますが、
次の世代を担う選手の育成は、何よりもトップチームのために、必要不可欠なこと。
卒業後、社会人リーグでプレーしたあと、アジアリーグデビューを果たした、
波多野誉行(よしゆき)選手や、篠原亨太(こうた)選手(ともに日光バックス)が、
今季の日本代表候補に名を連ねたように、
学生チームだけでなく、社会人リーグのチームとの対戦も、
長い目で見れば、トップチームにとって、必ず有意義なものになると言えるでしょう。
そして、このことは、日本だけでOKというわけでは、ありません。
日本のホッケー関係者の方たちからは、時として、
「アジアリーグは、韓国と中国をレベルアップさせているだけで、日本にはメリットがない」
といった言葉を耳にすることがありますが、それは、あくまで短期的な視点に立っての話。
韓国や中国のレベルアップも、長い目で見れば、
日本のトップチームにとって、必ず有意義なものになるはずです。
なぜならば、
10年後になっても、日本代表が、ヨーロッパや北米へ強化のために遠征するのは、
費用も時間も、大きな負担になることは変わらないでしょうが、
しっかりとしたプランを立てて、アジアのホッケー界を育成していけば、
10年後には、韓国と中国がレベルアップを遂げて、
日本代表の強化のために、ふさわしい対戦相手となるかもしれないからです。
それだけに、今季の開幕前に行われた「アニャンカップ」で、
High1に勝利した延世(ヨンセ)大学や、高麗(コリョ)大学など
韓国の大学チームを、トップチームと対戦させるのに加えて、
アジアリーグの試合として、日韓大学対抗戦を開催したり、
再参入を熱望しているハルビンや、チチハルなど、
中国ホッケー界を支えてきたチームも、再び招き入れて、
アジアのホッケー界全体の育成を進めることが、
やがて必ず、日本代表の強化へと つながっていくでしょう。
━━━【 変化 】━━━
このように、アジアリーグの発展のためには、
参加国やチーム数を拡大していくことが、重要になってくると思われますが、
現実問題として、次から次へ「アジアリーグに参加します!」と、
手を上げるチームが出てくることは、おそらくないでしょう。
そこで、ポイントとなるのが、前述した「スポット参戦」です。
予算的な面や、スケジュールとの兼ね合いで、
開幕からシーズン終了まで、戦うことはできなくても、
限られた時期に、10試合〜15試合くらいであれば、
大学や社会人、さらに中国のチームにとっても、
アジアリーグ参戦のハードルは、決して高くはないはず。
明らかにレベルの差があるチーム同士の試合は、
トップチームの外国人選手の出場を認めないようにしたり、
ナショナルブレイク期間中の、代表選手不在の時に試合を組むようにすれば、
アジアリーグの “メニュー” が、一気に増えて、いろいろな対戦を見れるようになります!
ただ、このようなフォーマットにすると、
「チームによって対戦回数が違うので、不公平になってしまう」
と言われる方がいるかもしれません。
しかし、そのような考え方も、そろそろ変える時期なのでは?
そもそもプレーオフは、レギュラーシーズンのアンバランスをフォローするために、考えられたもの。
開幕からシーズン終了まで、フル参戦するチームの試合数が同じであれば問題なし。
それよりも、今まで見られなかったカードや、チームが見られるようになるほうが、
ファンの皆さんにとっては、楽しみが増えますよね!
さらに、もう一つ、変えてみては? と思うのが、開催時期です。
これは日本だけでなく、韓国や中国に行った時にも、チーム関係者の方から耳にしたのですが、
さぁ、これからホッケーシーズンだ!
という12月くらいまでには、半分以上の試合が終わってしまっているので、
「なかなかお客さんが増えてくれない」という声です。
今季のMVPに輝いた桜井邦彦選手(王子製紙)が、
「ファイナルの第1戦で、白鳥アリーナに、
3000人のファンの人が詰め掛けているのを見て、
試合開始のフェイスオフの時、少し足が震えました」
と話していたように、選手にとっても、
満員のスタンドは、モチベーションになるはずなので、
どうすれば、お客さんを呼ぶことができるのか?
ということは、まさに重要な命題!
そこで、参考にしたいのが、「
bjリーグ」の考え方です。
3年前の秋に発足し、バスケットボールのプロリーグとして、
従来の
日本リーグ(JBL)とは、一味違った運営方針が話題となっていますが、
興味深いのは、プレーオフの開催時期。
企業チームが中心の日本リーグが、3月末までに優勝が決まるのに対して、
bjリーグは、河内敏光コミッショナーの、
「企業スポーツは、年度をまたげないかもしれないけれど、
我々は、たくさんのお客さんが来てくれる時期を、クライマックスにしている」
という言葉どおり、ゴールデンウィークに、ファイナルを行っています。
こんな柔軟な考え方を参考に、
アジアリーグも、集客力の低い9月や10月からスタートするのではなく、
11月頃に開幕して、各国が参加する世界選手権を挟み、
NHLに負けじと、5月末から6月にファイナルを開催するほうが、
一般のスポーツファンの人たちや、マスコミの関心は高まるのではないでしょうか?
「年度をまたぐ」ということを、問題視する方がいるかもしれませんが、
中国は、9月が新年度なので、問題はないですし、
韓国は、日本と近い3月が新年度ですが、アニャンハルラも、High1も、
企業の名前がチーム名となっているものの、バックスと同じように、全ての選手がプロ契約。
となると、年度をまたいで、アジアリーグを行うことで、
問題が生じてしまう可能性があるかもしれないのは、
現在の7チームのうち、日本の企業3チームだけと少数派だけに、
4月以降も、選手の登録や抹消をできるようにすれば、実現も可能です。
そこで、「語りべ」通信が提案するアジアリーグのフォーマットは──
★ レギュラーシーズンを、1stステージ(11月〜12月)、
2ndステージ(1月〜2月)、3rdステージ(3月〜世界選手権を挟んで〜4月)と、
3つの期間に分けて、各10〜15試合ずつのリーグ戦を実施。
★ 社会人チームや、日韓の大学チーム、さらに中国の国内チームなどは、
ステージごとのスポット参戦を可能に。
★ 各ステージの優勝チームと、それ以外のチームの中で最も勝点の多いチームによる
ベストオブセブン(7回戦制)のプレーオフを、5月から開催して、チャンピオンが決定!
このようなフォーマットであれば、レギュラーシーズンだけでヤマ場が3回ある上に、
3rdステージには、プレーオフに進めなかったロシアの極東地区のチームや、
北米のマイナーチームなどを、積極的に招致することも可能。
さらに、「このステージは、バリバリのNHL選手を連れてきて、プレーオフの出場権を取る!」
というような、各チームの駆け引きも見られるかもしれません。
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「アジアの春 〜続日本編〜」と銘打って、お届けしてきましたが、
「語りべ」も、ホッケープレスの端くれとして、十数年間も取材をさせてもらってきたので、
実現させるには、極めて大変なプランばかりだというのは、もちろん分かっています。
しかし、
アジアリーグが発展することなく、このまま、ただシーズンを重ねるだけでは、
他の国がレベルアップを続けている中で、地理的な条件でハンデがある日本が、
オリンピック出場という目標を達成するのは、
いつまでも “夢物語” のままで終わってしまうのでは、ないでしょうか?
日本が、地元開催の世界選手権で、優勝することができなかっただけでなく、
昨年ディビジョン1昇格を果たした韓国は、わずか1年で、ディビジョン2に逆戻り。
さらに中国も、ディビジョン1への返り咲きが、できずじまい…。
こんな現実を目の当たりにして、
今こそ “変化” しなくてはならない時ではないかと思う、「アジアの春」なのです。