日本全国津々浦々のホッケーファンの皆さん、こんにちは。
前回の記事で紹介したように、昨日、西東京市のダイドードリンコ アイスアリーナでは、
元オリンピック銀メダリストで、プロフィギュアスケーターの伊藤みどりさんと、
榛澤務(元西武鉄道監督)、星野好男(元コクドコーチ)両氏による記念フェイスオフを皮切りに、
「
西武鉄道 vs コクドOB戦」が行なわれました!
試合には、西武鉄道OB44名と、コクドOB29名が参加して、
かつてのヒーローたちが、久しぶりにユニフォーム姿を披露!
試合は5−5の引き分けに終わったものの、
日本のホッケー界を支えてきた名選手たちが、現役時代さながらの好プレー(&珍プレー?)を演じると、
1200人のファンからは、何度も大きな歓声が湧き上がり、
試合後には、応援に駆けつけたSEIBUプリンスラビッツのオールメンバーに、
選手の家族やファンも加わって、楽しい時間を過ごす姿が!
さらに、会場を移して懇親会も行なわれ、夜遅くまで、ホッケーの話に花が咲いていました!
また、アリーナの外では、ラビッツのスプリングフェスタ(ファン感謝イベント)も、併せて開催され、
ダイドードリンコ アイスアリーナは、文字どおり、楽しい “HOCKEY DAY” でした!
選手たちも、ファンの人たちも、笑顔いっぱいの一日となりましたが、
その心中は、必ずしも、楽しい思いだけではなかったはず。
というのも、昨年の12月19日に、ラビッツのオーナー企業である(株)プリンスホテルが、
今季限りでの活動終了を発表した際に、
「チームの引き受け先企業を探して結論を出す」とした3月末が、迫ってきているからです。
まだ正式な発表こそないものの、今月23日のプレーオフ ・ファイナル終了後、
小山内幹雄オーナー代行が、マスコミに対して、「厳しい状況」だと話していたように、
昨今の経済状況を照らし合わせると、明るい見通しではなさそうな様子…。
しかし、だからといって、オーナー企業が悪いとは言い切れません。
残念ながら、現在の日本に於いて、「スポーツ=文化」という仕組みにはなっていないため、
オーナー企業に依存する体質から、完全に脱却することは、大変困難です。
それだけに、世界中を襲っている景気後退によって、
自社のスポーツチームに対し、規模縮小や、休廃部という企業判断を下すことも、やむを得ないところ。
事実、ラビッツの中には、
「いくつもホテルがクローズになっているし、従業員も解雇されたりしているのを聞くと、
チームがなくなると言われても、何も言えないかもしれないですね」
という胸の内を明かしてくれた人も、いたほどでした。
しかし、その一方で、一般のファンの人たちから、お金をもらって、試合をする以上、
オーナー企業は、スポーツチームを保有している「責任」があることも、忘れてはなりません。
活動終了発表後、ラビッツの存続を求める署名活動をスタートさせ、
約22000名の署名を集めた、北海道私設応援団代表の大西弘樹氏は、
プリンスホテルに対して、集まった署名を提出した一方で、
「(3月末の)タイムリミットが近づいてきた状況にもかかわらず、
全く明確なビジョンが示されないことは、
選手やスタッフ、関係者、ファンの存在を、軽視していると言わざるを得ない」
として、25日に、
48項目に及ぶ質問状を提出したそうです。
署名活動に際しては、ラビッツだけでなく、各チームのファンや、
ホームアリーナのある東伏見地区の商店会の人たちなども、協力していただけに、
この熱意に対しても、オーナー企業として、「責任」を果たす姿勢が求められるのは、明らかでしょう。
また、その一方で、今季のアジアリーグが終了した23日には、
(財)日本アイスホッケー連盟から、冨田正一(しょういち)会長のコメントが、リリースされました。
「プレーオフ ・ファイナルを終えて」
という題目のリリースでは、先ず、チャンピオンに輝いた日本製紙クレインズを称えたのに続き、
ラビッツに関して、以下のようなコメントが掲載されています。
(転載にあたり、一部、改行位置と句読点を改めました)
SEIBUプリンスラビッツは、廃部発表以来、難しい環境を乗り越え、
全日本選手権に続く二冠にチャレンジしたことは、
選手のがんばりとあわせ、チームの伝統の力、重さをあらためて感じました。
素晴らしいチームに拍手を送りたいと思います。
SEIBUプリンスラビッツの存在は大きく、今後も、プレーできるよう、
限られた時間ですが、連盟として、会社側の努力をサポートしていきます」
公式な記者会見は行なわれずに、コメントのリリースだけだったため、
「限られた時間」というのが、連盟の年度末となる6月末までなのか、
それとも、プリンスホテルが当初表明した3月末までの、
わずかな期間を示しているのかは、定かでありません。
しかし、いずれにしても、プリンスホテルが、ラビッツを活動停止とすることによる影響は、
日本代表や学生などの指導者や、レフェリー、ラインズマン、
さらに試合の運営担当者などにも、及ぶことが予想され、
冨田会長のコメントにある「存在は大きい」という言葉は、紛れもない事実なだけに、
連盟としても、この問題に、真摯に取り組まなくてはならないはず。
アイスホッケーだけでなく、全てのスポーツは、
ファンの存在なくして成り立たないことは、言うまでもない上に、
現実的な観点から言えば、
チビッ子から、オールドタイマーまで、全国各地でパックを追っている選手たちの登録料が、
連盟の大きな財源となっています。
それだけに、ファンが求め、チビッ子や学生たちなどが目標としているトップチームの存続に対して、
日本のアイスホッケー界を統括する連盟も、大きな「責任」を負っているのは、間違いないでしょう。
ところで、ここ10年くらいの間、
ホッケーだけに限らず、企業スポーツ限界論を唱える人が増えてきましたが、
「語りべ」は、必ずしも そうだとは思いません。
なぜなら、昨季のプレーオフ ・ファイナルで、優勝の瞬間を見ようと、
苫小牧から、6時間もバスに揺られて、釧路までやってきた、
王子製紙の社員の人たちの楽しそうな表情や、
日本リーグ時代に行なわれた北九州の試合に駆けつけた、
日本製紙の岩国(山口県)と、八代(熊本県)の工場の人たちが、
意気投合して、大きな声で、クレインズを応援していた姿などを目の当たりにした時に、
“企業スポーツの持つ本来の意義” を感じさせられたからです。
それだけに、連盟や、日本がイニシアチブを持って発足したアジアリーグも、
企業チームが、衰退していってしまわないようなシステムの構築を、しっかり考えて欲しいところ。
経費削減という言葉の表面だけをとらえて、
安易にシーズンを短縮したり、試合数を削減したりすることによって、
スポンサーメリットもなくなり、ファンも離れていくといった、
悪循環に陥ってしまう危険性があることも、忘れてはならないのです。
そして最後に、何より我々ファンにも、
ホッケーを愛し続けなくてはならない「責任」があることは、言うまでもありません。
OB戦終了後、リンク上にいた選手も、その家族も、そしてファンも、
誰もが笑顔を浮かべていました。
その笑顔と、また会うためには、
全ての人たちが「責任」を果たす必要が、あるのではないでしょうか?