日本全国津々浦々のホッケーファンの皆さん、こんにちは。
4月になりました!
新年度を迎えたことで、今日から新たなスタートという方も、多いのではありませんか?
そこで、加藤じろう直営!「語りべ」通信でも、
新たなスタートを切ることになった二人の選手に、スポットライトを当てて、お届けしましょう!
前回の記事でも紹介したように、
今季のアジアリーグは、5試合中、実に4試合がオーバータイムに及ぶという、
“アジアのホッケー界の伝説に残るファイナル” を制して、アニャンハルラが初優勝。
昨季から制定されたプレーオフMVPには、
2試合連続ゲームウイニングゴールを決めるなど、
セミファイナルからの9試合で、6ゴール 7アシストをマークする活躍を見せた、
#25 ブロック ・ラドゥンスキ 選手(写真中)が、選ばれました。
しかし、ラドゥンスキ選手に引けを取らない働きで、
初優勝の原動力となった二人のことも、見逃すわけにはいきません。
その二人とは、
#43 パトリック ・マルティネツ 選手(写真右)と、
#30 ソン ・ホソン 選手(写真左)!
「オタカー ・ヴェイヴォダ ヘッドコーチ(当時)に、
アジアのチームでプレーしてみないか? と誘われたから」
とハルラとの契約に至った理由を教えてくれたマルティネツ選手。
実は、かつてヴェイヴォダ ヘッドコーチが、
古河電工(日光バックスの前身)を指導していたことから、
「てっきり日本のチームでプレーするのだと思っていた(笑)」 そうですが、
韓国にやって来てからは、異なる文化を積極的に取り入れ、
奥さまと、二人のお嬢さんと一緒に、コリアンライフを満喫しています。
そして、肝心の氷の上では、
目の肥えたチェコのファンを沸かせてきた高いスキルを、存分に披露!
アジアリーグ屈指のプレーメーカーとして、
対戦するチームから、恐れられるほどの存在感を発揮し続けました。
「あと1年。あと1年と言っているうちに、
韓国へ来てから、もう5年になっていたよ(笑)」
というマルティネツ選手は、もう38歳。
「将来はコーチをしてみたいから、そろそろ引退するかも?」
と数年前から、冗談めかしていましたが、
今季は、開幕前に 「最後のシーズンにする」 と宣言。
その強い決意が、プレーにも表れていたマルティネツ選手は、
レギュラーシーズンMVPに輝いたほどのプレーで
ハルラの2年連続リーダーズフラッグ(第1位)獲得に大きく貢献し、
プレーオフでの活躍にも、期待が集まりました。
しかし、「好事魔多し」との言葉があるように、
マルティネツ選手は、セミファイナルの第1戦で右足を負傷し、救急車で病院へ。
診断の結果は、全治6週間。
最後のシーズンを、不本意な形で終えることに…。
ところが、ファイナルの開幕前に会ったマルティネツ選手には、全く悲愴感はなく、
穏やかな笑みを浮かべながら、こんな風に話していました。
「これもホッケーなんだよ」
不完全燃焼で、現役生活にピリオドを打つこととなったにもかかわらず、
プレーイングコーチの肩書きを持つマルティネツ選手は、
すぐさま気持ちを切り替えて、対戦相手の分析に着手。
「昨季のセミファイナルで負けた時は、クレインズの研究が足りなかったと思う。
でも、今季は彼がいろいろと研究して、対策を考えてくれました」
キャプテンの #5 キム ・ウジェ 選手から、こんな声が聞かれたように、
マルティネツ選手の経験と頭脳は、
シム ・ウィシク監督と、ペ ・ヨンホ コーチをサポートして、
初優勝への大きな力になりました。
しかし、マルティネツ選手は、自分の仕事ぶりを、決して評価することなく、
笑みをたたえながら、こんな言葉を口にしました。
「ラッキーだっただけさ」
穏やかな表情だったマルティネツ選手の表情とは対照的に、
ハルラのゴールを守り続けたソン ・ホソン選手の瞳は、涙で潤んでいました。
それもそのはず、
以前の記事で、お届けしたとおり、
ソン ・ホソン選手は、韓国の成人男子に課せられた、約2年の兵役任務に就くことから、
開幕前から、「今季を区切りのシーズンにする」 と決意していたため、
優勝の瞬間は、体全体で喜びを表現!
しかし、歓喜の表情を浮かべる24時間前に、
ソン ・ホソン選手は、かつてない程の悔しさを味わっていました。
ファイナル第4戦。
試合終了2秒前に、同点ゴールを許し、
オーバータイムで、決勝点を奪われての逆転負け。
試合終了後、ハルラのドレッシングルーム前の廊下に、
腰を下ろしたまま動けずにいたソン ・ホソン選手は、
キム ・ソンベGKコーチから、言葉を掛けられても、全く表情を動かさずじまい…。
「ハートが弱い」
対戦相手のチームの選手から、
こんな厳しい評価を耳にすることもあっただけに、
翌日の試合への影響が心配されましたが、
「最後の試合だと思わずに、プレーに集中するように心掛けました」
というソン ・ホソン選手は、
第5戦では、幾度となく訪れたピンチを凌いで、ついにアジアの頂点へ!
「厳しい状況の中で、彼が頑張ったのが勝因だよ」
と守護神を称えたマルティネツ選手と、力強く抱き合っていました。
「アジアのホッケーファンの皆さんに、お礼を言いたいです」
優勝後のインタビューで、ようやく笑顔を見せてくれたソン ・ホソン選手。
最後に、こんな一言を残して、リンクをあとにしました。
「また2年後に戻ってきます!」
家族とともに、もうすぐチェコに帰国する マルティネツ選手と、
世界選手権代表を辞退して、兵役任務に就く手続きを済ませた ソン ・ホソン選手。
“新たなスタート” を切る二人が、
またリンクに戻ってくる日を、心から待ち望みたいですね。
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2003年11月にスタートしたアジアリーグは、
これまで毎年、日本のチームがチャンピオンに輝いていましたが、
今季は、7年目にして初めて、韓国のチームが優勝を飾りました。
頂点に立ったハルラはもちろん、
High1(ハイワン)も、4年続けてプレーオフに進出しているとあって、
「韓国の両チームの外国人選手枠を見直すべきでは?」
という声が、日本の関係者やファンから、ずい分と聞こえるようになっています。
しかし、約2年間の兵役任務という、
避けることのできない国の決まりがあることで、
長期的な戦力強化のプランを立てられない現状を考えると、
外国人選手によるチーム力アップは、必然と言えるでしょう。
また、昨季のセミファイナルで、
ハルラの強力なオフェンスと対峙したことで、
「ファイナルの試合は、ずい分と楽に感じました」
という声が、何人ものクレインズの選手から聞かれたように、
力のある外国人選手が揃う韓国チームとの対戦が、
日本の選手たちの財産になっているのは、明らかなところ。
この事実を考えれば、韓国チームの外国人枠を減らして、
チーム力がダウンしたところで、アジアリーグの均衡化を図るよりも、
負けじと日本のチームが腕を磨いていって、
リーグ全体のレベルアップを目指していくほうが、
日本のホッケー界にとって、得策であるのではないでしょうか?
ハルラが初優勝したことで、ライバルの High1 も闘志満々のはず。
さらに、王座奪還を狙う日本のチームだけでなく、中国チームも力をつけて、
どこが勝つか分からない大混戦となっていくように、
アジアリーグが “新たなスタート” を切ることを期待しましょう !!
◆photo supported by
YONSU ,
TOMOKI OTANI
and
OSAMU KIMURA editor of
K-HOCKEY!