日本全国津々浦々のホッケーファンの皆さん、こんにちは。
アジアリーグのレギュラーシーズンは、あと6試合を残すのみとなり、
リーダーズフラッグや、個人タイトルの行方が注目される一方で、
チャイナドラゴンだけは全日程を終了し、昨日、帰国しました。
最終成績は、36戦全敗…。
手にした勝点は、わずか2ポイントのみ…。
どちらもアジアリーグワースト記録を塗り替えてしまいましたが、
振り返ると、今季のチャイナドラゴンは、大きな改革を断行し、新しいシーズンを迎えました。
「若い選手を育成して、3年から5年で、
日本の選手たちと変わらないくらいに、レベルアップすることが目標です」
ジー ・ジュンヘン団長が、こう話していたとおり、
レギュラーシーズン初戦の3ヶ月前から、
25歳以下の若手選手たちを集めて、トライアウトキャンプを実施。
さらに、その1ヶ月後には、
昨季から提携を結んでいるベラルーシ アイスホッケー協会から派遣された、
6人の助っ人選手がキャンプに合流。
開幕1ヶ月前に、ようやくキャンプをスタートさせ、
外国人選手が合流したのは、開幕直前だった昨季とは打って変わって、
エフゲニ ・レベデフ新監督の熱心な指導の下で、
今季のチャイナドラゴンは、アジアリーグへ向けての準備に力を注ぎました。
ハルビンで行なわれていたキャンプに足を運ぶと、
若手選手たちが、開幕ロースター入りを目指し、
ケガを押しても、厳しいトレーニングに耐えている姿や、
それに負けじと、外国人選手たちも汗を流す姿が見られ、
“チャイナドラゴンが波乱を起こす” という期待感が!
王子イーグルスとの開幕シリーズこそ、3連敗を喫したものの、
日光に乗り込んでのバックス3連戦では、1点を争う接戦を演じて勝点をマーク。
チームの一体感も感じられ、
チャイナドラゴンへの期待感は、さらに高まっていくかに思われました。
ところが、その直後に行なわれた東北フリーブレイズとの3連戦では、
0-15。 1-9。 2-8。 と惨敗。
「経験の少ない若い選手たちが、完全に自信を失ってしまいました」
レベデフ監督が、静かな口調で振り返ったとおり、
初めてアジアリーグで戦う若い選手たちにとって、
この3連敗は、大きなショックとなってしまったようで、その後の試合では、
「ビクビクしながら、プレーしている」
との声が相手チームから聞かれたほど。
さらに、チャイナドラゴンにとって不運だったのは、
本来ならば、そんな時こそ頼りにしたい外国人選手たちが、
フリーブレイズとの3連戦を前に、食あたりに合い、揃って体調を崩してしまったこと。
海外に赴いた時に、同じような経験がある人には、彼らの気持ちが分かるでしょうが、
慣れないアジアでの生活が続いている中でのアクシデントは、
精神的なダメージになってしまった様子。
それに追い討ちをかけるかのように、
試合が迫っているのに、練習時間が設けられていないことも珍しくなかったそうで、
中国でプレーすることをポジティブにとらえていた #17 ドミトリー ・ドゥディク 選手からも、
「中国協会は、ホッケーを発展させるために、もっと力を尽くさなければならない!」
との苦言が…。
チームを鼓舞しようと、気持ちを前面に出してプレーするドゥディク選手の姿は、
シーズンが進むにつれて、残念ながら、だんだん見られなくなっていきました。
レベデフ監督は、今季を振り返って、
「若い選手を育てることをテーマにして戦ってきましたが、
大きく成長した姿を、見せてくれた選手もいました」
とDFの #18 リ ・ジエン(写真)、FWの #28 ジャン ・ハオ 両選手を称賛。
しかしながら、その二人の名前を挙げたのに続いて、こんな本音も。
「他の選手も成長する姿を見せてくれましたけれど、大きな成長ではありせんでした。
そのため、外国人選手たちと若い選手たちとの間に、スキルの差があったので、
一緒のセットでプレーをさせることが、とても困難でした」
レベデフ監督は、アジア冬季大会と世界選手権で、中国代表チームの監督も務めることから、
アジアリーグの試合のない時には、
国内リーグでプレーする選手を、何度もスカウティングしたそうですが、
「今季のチャイナドラゴンに所属していない選手の中に、能力の高い選手が8人いました。
本来ならば、これまでに(アジアリーグの)経験を積んできたベテランを、
若い選手たちとミックスして戦えば、違う結果になっていたと思います」
と言って、無念そうな表情を垣間見せていました。
既に中国協会から、「来季の(監督就任の)オファーを受けました」というレベデフ監督は、
「今季経験を積んだ若い選手に、8人のベテランをミックスさせて戦えば、
もっといいチームになるはずだと思います」
との青写真を描いているものの、
「まだオファーを受けるかどうかは、決めていません」
と来季の監督就任については、返事を保留しているそうです。
大差がつく試合が多くなってしまって、
日本と韓国のチームと、ファンの皆さんに対して、本当に申し訳ないと思っています。
レベルの差があるにもかかわらず、試合をしてくださったことと、
我々がレベルアップをしていくのに、力を貸してくださったことを、深く感謝しています。
今季経験を積んだ若い選手と、ベテランを加えることができれば、
来季は、もっといいチームになって、皆さんとお会いできると思っています。
祖国のベラルーシをはじめ、ヨーロッパ各国で、20年以上の指導者歴を誇り、
チームを優勝に導いた経験も多いレベデフ監督は、
これまでのキャリアで、「最も良くないシーズン」を戦い終えるにあたって、
こんなメッセージを残しました。
アジア冬季大会も、世界選手権も、
今季のチャイナドラゴンでプレーした若い中国人選手たちだけで臨む予定だけに、
苦戦を強いられるのは必至。
ナショナルチームだけでなく、チャイナドラゴンの運営にあたっている中国協会は、
レベデフ監督の言葉を、どう受け止めるのでしょうか?
残念ながら、北米やヨーロッパと比べると、国際競争力はもちろんのこと、
人気の面でも遠く及ばないアジアの男子ホッケー界が、
これから底上げをしていくためには、中国のレベルアップは必要不可欠のはず。
それだけに、これから中国協会が、どのように舵をとっていくのか?
そして、来季のチャイナドラゴンは、どんな顔ぶれとなって、ファンの前に戻ってくるのか?
気になるところです。