日本全国津々浦々のホッケーファンの皆さん、こんにちは。
ここのところ、各地から春の便りが届いていますが、
3月も今日で終わり、明日からは新年度に。
まだホッケーシーズンは続きますが、
日本アイスホッケー連盟が、昨年に公益財団法人へ移行したのに伴って、
他の国々より3ヶ月早く、
日本のアイスホッケー界も、明日から新年度を迎えることになります。
新年度の始まりを前に、今季を振り返ると、
記憶に新しいのは、何と言っても、
王子イーグルスのアジアリーグ優勝!
今季のイーグルスは、レギュラーシーズンを首位で戦い終えたのに加えて、
プレーオフも制して、完全優勝を達成。
レギュラーシーズンとプレーオフで、揃って勝利したのは、
2006-07シーズンの日本製紙クレインズと、
一昨季のアニャンハルラに続く、3度目の快挙となりました !!
「(イーグルスには)隙がないんですよ」
プレーオフで対戦した選手から、こんな言葉が聞かれたように、
堅実なディフェンス力を軸にした今季のイーグルスの強さは、
誰もが認めるところでしょうが、
開幕からの足取りを振り返ってみると、決して順風満帆だったわけではありません。
「正直に言って、恥ずかしいスタートでした」
と
齊藤哲也 キャプテンが、話していたとおり、
いきなり開幕から3連敗を喫したのに始まって、
10月を終えた時点で 3勝5敗とスタートダッシュに失敗。
ところが、
山中武司 監督は、
今季のスケジュールでは、中盤以降に試合が多く組まれていることも熟知した上で、
「負けた試合から学んでいく」
と常に言い続け、決して慌てることはありませんでした。
指揮官の落ち着いた舵取りが、成績に反映されてきたのは、
11月に入ってからのこと。
イーグルスは一気に加速し、11連勝したのを皮切りに、
その後も着実に勝点を積み重ね、
1月の韓国遠征でトップに立ってからは、首位の座をキープ。
その戦いぶりを見る限り、
2月の全日本選手権でも、優勝候補の大本命だと思われましたが、
決勝戦で、“最大のライバル” 日本製紙クレインズに逆転負けを喫し、
7年ぶりの日本一を逃すことに・・・。
しかし、イーグルスは、この敗戦を決して無駄にはしませんでした。
桜井邦彦 コーチの話によれば、
「もう一度、チームのシステムを見直すことができた」
のだそうで、さらにプレーの精度を高めるための礎に。
また、ファイナル第4戦で3点をリードした直後に、30秒間で2点を返され、
タイムアウトをとった理由について、
「わずか(2分42秒)な間で、クレインズに3連続失点して、
全日本選手権の決勝で負けた時は、
流れを切って、落ち着かせることができなかったですから」
と山中監督が教えてくれたとおり、試合の流れを掌握し続けるための布石に。
そして何よりも、「もがいて、苦しんで、経験を積んでいったシーズンだった」
と齊藤哲也キャプテンが、振り返っていた言葉の重みが示すように、
勝利への欲望を高める、選手たちのエネルギーにもなったのです。
そんな気持ちの表れだと言えるでしょう、
イーグルスの選手たちの誰もが、自分の役割を心得ていたのは、特筆に値します。
たとえば、
小川将史(まさふみ) 、
勝也(かつや)兄弟に、
石塚武士 選手のラインは、
第4セットの登録で、アイスタイムは少なかったですが、
ペナルティキラーとしての仕事を、十全に果たしていたのはもちろん、
ケガなどでプレーできない選手が出た時には、
主力ラインにシフトされ、全く遜色のないプレーを披露。
このようなことは、自分の役割を心得ていた、
選手たちの強い意識の表れに違いありません。
なかでも印象的だったのが、20歳の
三田村康平 選手の言葉でした。
2年目にして、不動のレギュラーとなった三田村選手ですが、
今季のアジアリーグでは、12月11日のチャイナドラゴン戦で得点して以来、
何度もチャンスはありながら、ゴールを決めらないまま、プレーオフへ突入。
それだけに、ファイナル第2戦で、
3ヶ月ぶりのゴールを決めた時の、うれしそうな表情が光っていましたが、
「ゴールがなかったのは、かなり気になっていましたけれど、
自分たちの役割は、相手の強いセット相手に、失点をしないことですから」
と三田村選手は、すぐさま表情を引き締めていました。
一方、ベテランに目を転じても、
今季は出場機会が減ってしまったにもかかわらず、
「悔しい気持ちもあるだろうけれど、チームのために、よく尽くしてくれている」
と本間貞樹 GM が称えていた
荻野順二 選手。
そして、10月の High(ハイワン)戦で負傷し、手術が必要だとの声も聞かれたものの、
「(マーク)カヴォシーと、(齊藤)哲也の二人がケガをしていたので」
と CF 不在の状況に配慮して、
ベストコンディションでないまま、フル出場した
今洋祐 選手のように、
チームを最優先に考え続けていた選手の存在も、優勝への大きな力となりました。
苫小牧民報社が報じたところによると、
優勝を決めた4日後に、苫小牧市内で開催された祝勝会で、
山中監督は、会場に集まった人たちへ向けて、こう話したそうです。
選手たちは、負けた試合、失敗から学んで勝ち切るチームになり、
プレーオフ優勝に、つなげてくれました。
来季は、全日本選手権との2冠と、
皆さんから愛される強い王子イーグルスを目指します。
「負けた試合から学んでいく」
という姿勢を全員が貫き続け、極めた末に、アジアの頂点に立ったイーグルス。
まるでホッケー先進国のプロチームを見るかのように、
シーズンが進むにつれて、チーム力を高めていった姿は、高く評価されますが、
プレーオフ終了後、山中監督は、
喜ぶ選手たちの姿に、笑顔で視線を送りながら、こんな言葉を口にしていました。
「ウチの選手たちは、まだ学び終わっていないですよ。
(ファイナル第4戦で3点差を追いつかれて)あんな風に試合を面白くしてしまうんですから、
まだまだ学んでいかないと、本当の強いチームにはならないです(笑)」
今季のアジアリーグ最優秀監督は、冗談めかして話していましたが、
ディフェンディングチャンピオンとして臨むイーグルスは、
どんな姿を見せてくれるのか?
そして、アジアのライバルたちは、どうやって王者に立ちはだかるのか?
春になったばかりだというのに、
来季への期待は、高まっていきそうですね。